精神障害

精神障がいとは

精神疾患は、わが国でも増加しており、大学生の年代でももはや珍しいものではありません。
うつ病などの精神疾患のため自殺に至るケースがあり、大学生の死因の上位を自殺が占めています。大学生の年代に見られる精神疾患の多くは医学的治療によってかなりの程度まで回復が期待できます。

しかし、必ずしも通常のレベルで大学生活に取り組めるとは限らず、症状が残ったり知的作業の能力が十分に回復していなかったりします。このような精神状態が続くようであれば、精神障害のある学生として大学生活上の配慮や環境調整が必要です。
また、このような学生に対する配慮は、一人ひとりの精神疾患固有の経過や症状を理解した上で個別的な対応をすることが重要です。

統合失調症

統合失調症とは

幻覚や妄想などの症状が現れることが多く、思考の障害や情動面の不安定、不安障害、睡眠障害も伴うことがあります。
思春期から青年期に発症することが多く、治療薬の進歩により、副作用が少なく、症状が改善されるようになりました。

配慮や支援のポイント

服薬が長期間必要となることが多いため、定期的な受診を前提として履修スケジュールを組む必要があります。
また、症状悪化を短期的に抑制するために頓服薬を服用する場合があります。
講義中に服薬の必要があれば、服薬とそのための水分補給をあらかじめ許可しておくと良いでしょう。

憎悪因子を避けることも重要です。サークルやゼミの人間関係等に、発病のきっかけがあると考えられる場合は、しばらくは避けるように環境を調整する一方、学生本人には苦手な状況やストレスを自覚して身を守ることができるように生活を指導します。

気分障害(大うつ病性障害、双極性感情障害を含む)

気分障害とは

うつ病は、眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないなどの症状が持続します。
精神的・身体的ストレスが重なるなどの様々な理由で脳の機能障害が起きると、ものの見方が否定的になり自分が駄目な人間だと感じて意欲が低下します。

いつもなら乗り越えられるストレスも、より辛く感じてしまいます。休養をとらずに無理に活動を続けると悪循環に至ってさらに自信を喪失することがあります。
双極性感情障害とは、躁状態とうつ状態を一定の周期で繰り返します。

配慮や支援のポイント

服薬が一定期間必要になるため、通院と服薬への配慮が大切です。
症状悪化を短期的に抑制するために頓服薬が必要となる場合があります。講義中に服薬が必要であれば、服薬やそれに伴う水分補給もあらかじめ許可しておくと良いでしょう。

また、対人関係のストレスや睡眠不足、過労、飲酒などの憎悪因子を避けることも大切です。
特に飲酒は、酔いが醒めた後の気分の落ち込み、睡眠の質の悪化、処方薬との相互作用もあるので控えるべきです。飲酒を伴いやすい会合には参加しないような配慮が必要です。

さらに、うつ病の日内変動(朝や午前が不調)や、内服薬の影響で、試験や授業への出席が困難になる場合もあります。午前の講義を避けた履修計画を立てるなどの支援も有効です。

不安性障害

不安性障害とは

強い不安、動機、呼吸困難、手足のしびれ、めまい、気が遠くなる感じなどが突然に出現する「パニック障害」、対人恐怖が強く生活に支障をきたす「恐怖症」、何度も確認しないと落ち着かないなどこだわりが強くなる「強迫性障害」、犯罪などを契機とした「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」などがあります。

配慮や支援のポイント

服薬が一定期間必要になるため、通院と服薬への配慮が大切です。症状悪化を短期的に抑制するために頓服薬が必要となる場合があります。
講義中に服薬が必要であれば、服薬やそれに伴う水分補給もあらかじめ許可しておくと良いでしょう。

また、座席や口頭発表などにも配慮が必要です。強い不安・恐怖が生じた場合に、容易に退室できることが大切です。

不安や感覚過敏によって、周囲の雑音が非常に気になってしまい、講義に集中できない場合があります。こうした場合には、周りが比較的空いていて静かな席や、壁に近い最前列の席を優先的に確保することが有効です。
大勢の前で発表したり議論することが困難な場合は、教員が個別に聴いたり、可能なら代替手段で理解度を評価することを検討します。

睡眠障害

睡眠障害とは

睡眠になんらかの問題があり、症状には様々なパターンがあります。

なかなか寝付けない、早い時間に目が覚める、熟睡できずたびたび目が覚めて延々と寝返りをうち続けるなどの症状です。
また、睡眠リズムが乱れ、眠れるべき時間帯に眠ることができず、起きているべき時間帯に起きていられないという、概日リズム睡眠障害や、十分な睡眠をとっても日中に居眠りをしてしまい、さらに脱力発作(笑ったり怒ったりした時に力が抜ける)や金縛りを伴う中枢性過眠症(ナルコレプシー)もあります。

配慮や支援のポイント

通院と服薬への配慮が大切です。睡眠が安定するまでの期間は、定期的な受診が可能であることや、睡眠のリズムや体調を考慮した履修スケジュールを組むと良いでしょう。

また、生活リズムを規則正しく保つことが大切です。
夜遅くまで活動することや、短時間睡眠を続けること、アルコールの飲用は睡眠によくありませんので、避けるべきです。
さらに、ディスプレイの光を遅い時間まで見続けていると睡眠リズムが乱れやすくなります。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは

スポーツ中の事故や交通事故により、頭部外傷や脳血管障害を受傷した場合に、後遺症として様々な障害をきたすことがあります。

記憶の障害、注意の障害、遂行機能障害、社会的行動障害、失語症、失行症、失認症、半側空間無視などがあります。
これらの障害は外見から分かりにくく、自覚されることが難しい場合もあります。また、本人が障害について認識している場合には、実生活に戻った後で本人の悩みが深まることがあります。

配慮や支援のポイント

高次脳機能障害のある学生を受け入れる場合は、障害についての知識や当該学生に関する情報を関係者が共有しておくことが大切です。

復学を検討する学生がいる場合は、身体的機能だけでなく精神的機能や学力の変化がないか、記憶力や注意力の状態などを把握することが修学支援の内容を決めるにあたり重要となります。また、授業中ノートがとれない、試験を受けても以前と違って時間が足りない、忘れ物が多い、疲れやすく授業中に寝てしまうなどの問題が起こると考えられます。
そのため、レコーダーを活用してノートの補助とする、試験時間の延長、試験をレポートに代替する、メモリーノートの活用で忘れ物を少なくするなどの配慮が必要です。

※メモリーノートとは

高次脳機能障害のある人などが用いる記憶障害に対する補完手段です。
今後のスケジュールや、重要事項などを記載しておきます。

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